あくび指南所 2号店

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「理想のフットボール 敗北する現実」大住良之

サッカーの歴史の中には,美しいサッカーでファンに記憶を残しながら,頂点には登りつめられなかったチームがいくつかある。クライフのオランダやプラティニのフランスなどがそうだ。ベテランのジャーナリストである著者は,これらの美しいチームを自分の記憶の中から呼び出し,その美しさを描いてみせた。サッカーの美しいプレイを言葉で描くのは難しい。その難しい作業に,大住さんは正攻法で答えてみせた。美辞麗句を使うのではなく,丹念にそのプレイを描写することで。文章を読みながら,その美しいプレイを想像することのなんと楽しいことか。
美しいが勝てないチームを好む傾向が自分にあると気付いたのはいつごろだっただろうか。アフリカのサッカーに惚れたのもその傾向の延長だ。美しいプレイは,敗北の儚さとのコントラストで,その美しさが際立つのかもしれない。