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スターリングラード〜運命の攻囲戦 1942-1943 アントニー・ビーヴァー著 堀たほ子訳 朝日新聞社

530ページの大著,本格派戦史ノンフィクション。過酷このうえないスターリングラードの戦いを緻密かつ生々しく描いている。戦地の兵士が故郷に向けて書いた手紙(その多くは届かなかった)や死んだ兵士の傍らで発見された遺書や日記を通して,激戦の描写を人間味のあるものとしている。
この大著から分かるのは,この歴史的な激戦の中での兵士達の命がいかに軽いものであったかということだ。スターリンヒトラーという二人の独裁者の体面が優先される中で,兵士達の存在は駒以下。飢えと寒さで戦う体力を失う兵士達,退却にあたって置き去りにされる負傷兵達。その悲惨さを著者は公平な眼で裁いている。
スターリングラード―運命の攻囲戦 1942‐1943