あくび指南所 2号店

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ハイ・フィデリティ ニック・ホーンビィ著 森田義信訳 新潮文庫

ハイ・フィデリティ (新潮文庫)
音楽オタクの30男が恋愛についてグダグダと悩む話。
オタクやマニアを自認するような人間は,相手の趣味でその人となりを判断してしまうことがあるに違いない。××のファンとは付き合えないよ,みたいにね。でもそんな生き方は交友関係を狭めるし,それだけで人を判断するのは健全とはいえない。
この小説の主人公は,まさにそんな男。狭い音楽オタクのコミュニティで生き,音楽のセンスこそが人の価値を決めるように考えている。でもいやな男として書かれてはいない。愛すべきダメ人間だ。恋愛についても,異性に対する子供じみた思い込みと,臆病で責任を取りたがらない態度のため,恋人はいても結婚には至らない。そんな主人公もラストではちょっとだけ大人になり,相手の価値感を尊重できるようになった。
こう書くと説教くさいと思えるかも。でもそんなことはない。それは多分著者自身がオタク・マニア的心理を持っていて,その心理を基本的には認めているからなんだろうと思う。