あくび指南所 2号店

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「聞き書 宮澤喜一回顧録」御厨貴・中村隆英編 岩波書店

宮澤元首相が10回のインタビューで、終戦直後から総理大臣時代までの思い出、内幕を、驚くほど正直に語っている。
終戦直後からつい最近まで、官僚・政治家として国政の最前線にいた貴重な人物であるだけに、その証言はとても貴重。特に終戦直後のGHQ吉田茂らについての話が面白い。
また、インタビューの内容・語り口に、本人の性格や信念がよく表れている。まず感じるのは自分の信じる理念に忠実であり、スジを通すことにこだわる人だということ。周囲の事情で理念を曲げることをこころよしとしない。一方で、多少の妥協をしてでも何が何でも目標を成し遂げるという馬力は感じられない。その良い例となるのが日米繊維交渉についてのくだりだ。最終的にこの交渉を妥結させたのが、田中角栄だったということも、この二人の政治姿勢の差を表していて面白い。
さらに、自分の直接タッチしていないことに関しては、「関係ないから知らない」と言ってしまうのもこの人ならでは。無責任とも思えるその語り口に、宏池会は公家集団と言われてた一端があるのかなと思った。
聞き書 宮沢喜一回顧録