あくび指南所 2号店

ほとんど買い物メモです。

ラッパ屋「妻の家族」@新宿・紀伊国屋ホール

最近公演の間隔が長くなって、ファンをやきもきさせているラッパ屋の新作です。
笑って、泣いて、やっぱり笑えるラッパ屋ワールド、鈴木聡ワールドですが、今回はいつもにも増して面白かった。今までのラッパ屋、鈴木作品の中でもトップクラスだと思う。登場人物が多くても、無駄な役がないし、ダレる時間もない。水場あり、どんでん返しありの楽しい芝居で、なおかつ胸に沁みる芝居でした。


今回の設定は、三鷹(?)の旧家。母親の嘘メールで、実家に集まった6人兄弟(姉妹)、とその夫(恋人?)4人、と父親2人の大家族コメディー&葬式コメディー。
それぞれに借金を抱え、嫌な言い方をすれば、ほとんどみんな負け組。金や出世が絡んで見苦しいところも見せるけれど、最後には家族って捨てたものじゃないなと思わせる。こうやって書くと陳腐だけれども、ありふれた人間のありふれた(でも貴重な)幸せを感じさせるラッパ屋の芝居が好きです。


最近葬式のために実家に戻ったこともあって、なんとなく思い当たる節があったりなかったりで、結構沁みる台詞、シーンがあります。
その中で一番沁みた台詞、葬式での母親(加藤治子:声のみの出演)の挨拶
「人間は結局のところ大して幸せにはなれないのではないかと思います」
文字通りに取ると暗い台詞ですが、最初からそういう風に考えれば自分の境遇をやたらに不幸がることもないし、大して幸せにはなれないのだからこそ、小さな幸せがうれしいんだというメッセージを受け取りました。
「所詮人間なんて馬鹿なもの」というあきらめがあるからこそ幸せになれることもある。「前向きなあきらめ」とでも言うのか、植木等の歌にも似た、カラッとした明るさがあります。


くどくど書いてきましたが、芝居自体はもちろんラッパ屋ワールドなので、くどくど考えずに、アハハと笑って楽しめます。
そこが軽演劇のいいところ(^^)。



芝居の後は、新宿の黒豚料理の店「すきずき」で、黒豚の西京味噌煮や黒豚天や馬刺しを食いながら、うまい焼酎に酔いました。
能書きが多すぎるきらいはあるけれど、おいしかったのでOK。