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「孤児たちの城 〜ジョセフィン・ベーカーと囚われた13人」高山文彦

孤児たちの城―ジョセフィン・ベーカーと囚われた13人

孤児たちの城―ジョセフィン・ベーカーと囚われた13人

誰もがみんな狂っている。ジャン・クロードは狂っている。アキオも多分狂っている。ジョセフィンは明らかに狂っている。
アキオはジョセフィンに狂わされた。ジャン・クロードは、多分アキオに狂わされた。狂わせたのは悪人か? ノン、多分悪人ではない。ただ狂人だっただけだ。
そして、ジャリとテルヤ。ああ、狂わざるをえない状況を避けるために狂わざるをえなかった、純真な魂よ。


ジョセフィンは確かに狂っていたかもしれない。しかし、その「子ども」たちはけして狂っていなかった。しかし、長年の歪みが彼らを押し潰していった。


狂人の群れに入っていく著者も多分狂っている。誰かを救おうとし、あるいは裁こうとする著者のペンは誰も裁けないし、むろん誰も救えない。裁けず、救えないことを知りながらそれでも綴らざるをえない著者のペンの哀しさ。


始めは善意だった。次も善意だった。善意で始まった人生がなぜ狂わざるを得なかったのか。そこには正義も悪もない。ただただ哀しみがあるだけ。

彼らの魂に救いがおとずれんことを。