あくび指南所 2号店

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「黒人アスリートはなぜ強いのか?」ジョン・エンタイン

陸上短距離やバスケットボールなどで黒人が圧倒的に強いのは,見ればわかる明らかな事実なのだが,それについて改めて論じられることは少ない。それは,人種の絡む論点は人種主義という批判をされるリスクが高いからだ。特に,アメリカでは。
この本は,そのタブーにあえて挑んだ本である(原書のタイトルはそのものズバリの「TABOO」)。そのため,人種主義的な主張をしたいのではなく,科学的に論じたいのだ,ということをくどいくらい説明している。それだけ微妙な問題だということがわかる。
著者は,黒人のスポーツ進出と人種主義の歴史については,十分にページを割いて説明している。しかし,日本語タイトルにある,なぜ強いのかという問いには十分に答えていない。陸上短距離は西アフリカ系が強く,長距離は東アフリカ系が強いという統計的な分析はある。一方,なぜという問いに対しては,環境を主要因とする主張を批判してはいるが,生物学的にどうかという答えはない。刺激的なタイトルに比べ,尻すぼみな感は否めない。