あくび指南所 2号店

ほとんど買い物メモです。

読書

六世笑福亭松鶴はなし 戸田学編 岩波書店

松鶴師と交流の深かった5氏(春団治師,文枝師,米朝師ら)へのインタビューで,豪放磊落というイメージのある松鶴師の人物像,逸話,芸への姿勢を語っていく。聞き手が鶴瓶師ということもあり,軽妙な調子で対話が進み,スムースに世界に入っていける。 私…

「パーフェクトマイル」 ニール・バスコム ソニーマガジンズ

長距離走者の孤独,といえばアラン・シリトーだが,この本はさしずめ中距離走者の孤独だ。 1950年代当時,多くのランナーが挑んでも到達することができなかった1マイル4分という記録は,人類の限界とさえも言われた。その壁に挑み続けた,イングランド,オー…

ツール・ド・フランス関連書籍の紹介〜これからツールを楽しみたい人に

最近,ツールにはまった人のために,ツール関連の書籍を紹介して見ようと思います。自転車ロードレースの本は数はそれほど多くないですが,結構良質な本があります。 「 //breeder.bk1.jp/rd/01920921/p-gon01611/noentry">ただマイヨ・ジョーヌのためでなく…

冠(コロナ) 沢木耕太郎 朝日新聞社 ISBN-4022578165

沢木耕太郎のアトランタオリンピック取材記。 かなり散漫な印象は受けるが,沢木節は楽しめるので,ファンには悪くないだろう。 ただ,2004年になって8年前のオリンピックの本を出すというのは,あまりに年数が空きすぎ。いくらお蔵入りしかけた本とは言え。

"The MAKING of NIGERIA'S SUPER EAGLES" CHUKA ONWUMECHILI

ナイジェリア代表スーパーイーグルスの歴史。 アフリカサッカーの世界では,まともなデータを得ることがなかなか難しい。その中で,ナイジェリア代表の初結成から現在(この本では2001年3月までをカバー)した歴史書が発行されているというのは,とてもすばら…

ヒップホップ・アメリカ ネルソン・ジョージ ロッキング・オン

20年以上にわたるヒップホップ・カルチャーをあらゆる角度から描く,ヒップホップ正史。単なるラップミュージックの紹介ではなく,ダンス,グラフィック,ヴィデオ,映画などのアート,ファッション,さらにはヒップホップビジネスの隆盛についても解説して…

「職業欄はエスパー」 森達也 角川文庫

3人の超能力者の日常生活を追いかけたノンフィクション。超能力者とマスコミ・世間との軋轢を通じて日本社会の歪みも垣間見える。 この本では3人の超能力者以上に,著者自身が主人公であると言える。著者は,最初から最後までグジグジと迷っている。超能力を…

黒い太陽と赤いカニ 椹木野衣 中央公論新社

岡本太郎芸術の評論。 岡本太郎の墓には,自作の彫刻「午後の日」が使われている。子供?が頬杖をついてニコニコしている像である。しかし,著者はこの彫刻の目が空虚な大きな穴であることに注目する。岡本太郎の作品によく見られるこの「穴」は,見る者にな…

聖典「クルアーン」の思想 大川玲子 講談社現代新書

クルアーン(日本での一般的な表記ではコーラン)を実際に読んだことがある人は少ないのではないでしょうか。(ちなみに私はだいぶ前に岩波文庫の井筒訳を読んだ)コーランに何が書いてあるのか,そういう記述になった背景にはどういう事情があったか,とい…

呪医の末裔 松田素二 講談社

激動の時代のケニア庶民史。植民地,独立,経済破綻と,変化の激しい時代のなかを,ケニアの庶民がどうやって生き抜いてきたかを,ある一族の経験を通して描く。 どのような時代でも,その時代に合わせて生き方を変えて生き抜く,庶民のしたたかな強さを感じ…

国際政治とは何か 中西寛 中公新書

高坂正堯の弟子ということで,師匠ばりの現実的な国際政治論を展開。 国際政治は根本的に,ジレンマ,トリレンマを抱えている。 時代が「宇宙時代」を迎え,コミュニケーション技術による「仮想の地球時代」となった。国際政治を取り巻く問題も過去とは変化…

カラー版 加藤大治郎 富樫ヨーコ編,佐藤洋美編 講談社

昨年レース中の事故で亡くなったWGPレーサー加藤大治郎の思い出を74人の関係者が語る。それぞれのコメントからは,大治郎の天性の素質に対して,非常に高い期待をしていたことが伝わり,改めて早すぎる死の重さを感じる。 メカニック,チームスタッフのコメ…

"Has Anybody Got A Whistle?" Peter Auf Der Heyde

ISBN:1903158311 やっと読み終わった。もちっと英語力が欲しいわ。 この本は,アフリカのサッカージャーナリストによる20年間のアフリカ取材体験記。著者は,ドイツ系南アフリカ人で元GKのサッカージャーナリスト。 南アフリカの国際舞台復帰,フランスワー…

『シューレス・ジョー』 W.P.キンセラ 文春文庫

知人のblogで映画「フィールド・オブ・ドリームス」について語られていたのに触発されて,久々に拾い読み。 あー,やっぱりいいなー,この本。 エディ・シズンズの「その言葉は野球である」,サリンジャーの「記憶があまりに濃密なので〜」で始まるモノロー…

アチャラカ 高平哲郎 ビレッジセンター

「アチャラカ」と「軽演劇」の違いに対して作者がこだわっているのはわかるんだけど,違いをわかってない人に対する見下した書き方がどうも鼻につく。 いろんなところに書いた原稿の再録した本のようで,同じ話が何度か出てくる。全体的に未整理の感。

『葬られた夏 〜追跡 下山事件』諸永裕司 朝日新聞社

1949年に起きた下山国鉄総裁が失踪し翌日礫死体で発見された事件は,自殺説他殺説が入り乱れ結論は出ていない。同じ年におきた三鷹事件,松川事件と並び,今でもなぞが多い。週刊誌の若い記者がこの事件を追ったのがこの書。 下山事件という大きな謎に対し,…

『イラク 戦争と占領』 酒井啓子 (岩波新書)

イラクについてネット世論もかまびすしい中,抑えるところは抑えておこうと,イラク研究の第一人者の本を買ってみました。イラク戦争勃発直前から現在(2003年末)までの状況を記しています。 基本的なところは新聞報道等で知ってはいましたが,イスラム宗教界…

『レトリック感覚』佐藤信夫(講談社学術文庫)

レトリック,あるいは修辞学などと呼ばれる文章表現のテクニックを,先人の名文を題材に分析・説明していく。直喩,隠喩,換喩,提喩,誇張法,列叙法,緩叙法の七つに分類。 文章を書くためのハウツーではなく,レトリックの背後にある意識を分析する学術書…

「元木由記雄 桜のプライド」永田洋光

今やミスターラグビーとまで呼ばれるようになった元木由記雄の評伝。 明治でプレイしていたころは,当たりの強さだけが目立つプレイヤーだった。当時は,10年後に周囲を生かすうまさを持つプレイヤーに成長するとは思っていなかった。今や,強さとうまさをあ…

「理想のフットボール 敗北する現実」大住良之

サッカーの歴史の中には,美しいサッカーでファンに記憶を残しながら,頂点には登りつめられなかったチームがいくつかある。クライフのオランダやプラティニのフランスなどがそうだ。ベテランのジャーナリストである著者は,これらの美しいチームを自分の記…

「黒人アスリートはなぜ強いのか?」ジョン・エンタイン

陸上短距離やバスケットボールなどで黒人が圧倒的に強いのは,見ればわかる明らかな事実なのだが,それについて改めて論じられることは少ない。それは,人種の絡む論点は人種主義という批判をされるリスクが高いからだ。特に,アメリカでは。 この本は,そのタ…

「現代建築の冒険」越後島研一 中公新書

建築家が別個に考えた意匠も時代の気分とは無縁ではない。この本では,日本の現代建築の変遷をいくつかの「形」の移り変わりとして捉えている。 現代建築の流れを概観でき,近所の建築物を見る際にも新しい視点を与えてくれる。 新書ゆえの限界かとも思うが…

「松尾雄治にもらった勇気」馬場信浩

作者が自分の世界に浸りすぎ,感情押し付けすぎで興ざめ。松尾雄治という興味深い素材を,インスタント風の味付けにしてしまったような感じ。

「国連改革」吉田康彦

国連改革というより日本人の国連信仰改革がこの本のメインテーマ。 日本人批判が鼻につく。

「ビアフラ戦争」室井義雄

1960年代後半ナイジェリアに起きたビアフラ戦争は,凄惨な内戦と言われた。リアルタイムでは知らないものとしては,どう凄惨であり,なぜそんなに凄惨であったのか,知りたいところなのだが,この本はいまいちその問いに答えてくれなかった。

「外国語の水曜日」黒田龍之助

楽しい外国語の勉強についての楽しい本。外国語の勉強はやはり楽しくなくちゃいけない。しかし,諦め悪く長く続けるのは大変だなあ。

「杯 WORLD CUP」沢木耕太郎

サッカーファン的にはイマイチ受けが悪かったようだが(なんとなくわかる),結構面白かった。 サッカーについて,ワールドカップについての本というより,サッカー,ワールドカップを通じた紀行本という趣き。沢木節が満載なので,やはりファンにはたまりま…

「無念は力 〜伝説のルポライター児玉隆也の38年」坂上遼

「淋しき越山会の女王」で有名な児玉隆也の評伝。 児玉の優れたところ,危ういところ両方が描かれている。 読者の感情に訴えかける文章が児玉の持ち味だが,そういう文章を求めるあまり,事実をおろそかにしてしまうこともあり,"売れる"ノンフィクションの…

「国際政治」高坂正堯

高校生くらいのころに読んで感動した本。書店で平積みになっているのを見て懐かしさから買って読んだ。 初版は1966年。もう40年近く前になる。しかし,書かれている内容はいまでも色あせていない。この本が優れているのか,人間の業が進化していないのか。 …

「イスラム報道 増補版」E.W.サイード

偏見にまみれる米国でのイスラム報道の状況を告発する書。 自分とは異質なものを理解するとき,「類型化」というのは便利な手段だ。自分の理解の中に無理やり当てはめることで,安心できる。しかし,それは思考の停止だ。考える前に結論を出してしまっている…